光待つ場所へ

2010年8月7日 小説
辻村深月
単行本
講談社
発売:2010/06/24
1,575円









短編集の新刊です。
どれも、読み進めていくうちに、あの人のことだなあとわかるので、
ぜひとも以前の作品を読んでいることをおすすめします。

「しあわせのこみち」
このお話は誰の話なのか、きっちり最初に名前も出てくるしわかりやすい。
ロードムービーには出てこなかったので、出てきてくれて嬉しかったです。
私は全然勉強も出来る人ではないし、主人公のように絵が出来るわけでもない、
その他に何が人よりできることがあるだろう・・・と考え出すと
答えが見つからないような凡人です。
なので天才とか何かを持っている人ゆえの苦しさはわからないけど、
自意識過剰さとか言葉には出さない嫌な感情については、
やっぱり辻村さんは天才的にうまくて、全然違う人なのに、
いろいろ見透かされてそうな気分になった。
どっちかというと、出来ないことが多くてへこんで、嫌になってひがむ方なので、
うらやましい悩みではあるんだけど、納得はできるものでした。


「チハラトーコの物語」
これはまた別の物語に出てきた人。
名前が違うから最初はよく分からなかった(この名前は出てきてたか忘れた)のだけど、
大体性格とか容姿とかの表現で、ああたぶんあの人だなと分かる。
かなりの嘘つきで、ここまでの嘘つき加減については理解できないんだけど、
恩師についての気の緩み(悪く言えば完璧さをつらぬけなかった嘘)とかは、
この人もちゃんとした感情を持っていて、冷静に嘘をついているようでも
完璧に何てやっぱりでき何だなということや、最後のある女性との再会での会話のような
感情の出し方はよかったです。
でも、嘘つきすぎてやっぱり共感はできないかも。


「樹氷の街」
この話が1番好き。
やっぱり前の2つが、あまり自分とはかけ離れてる人だったり、
自分には関係がなさそうなことで悩んだりしてるせいかな。
この話は、ある本とある本の間の話。
合唱コンクールの伴奏がうまくいかないことをきっかけとして、
1番何事も起こっていない話だけど、ずっと共感できた。
自分が天才ではないと、ずっと前に気がついている女の子は、
それでもやっぱり秀才であるし、私とは全然違うと思うけれど、
少しではあるけど胸のうちが聞けたのが1番かなあ。
ちょっと嫌な子だなって思った子も、最後には応援したくなったし。
(でもそれをいうと、チハラトーコもそうかな)
とにかく安心して読めたのはこれが1番でした。

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