文庫
小川 洋子
新潮社
2005/11/26
￥460
読みました。
確か小川さんの本は2冊ほど読んだはず。
正直うーん？と思ってたけれど、この本はよかった。
家政婦として働く主人公が派遣されたのは、記憶が80分しかもたない博士の家。
1日一緒に過ごしても次の日になれば、すべてを忘れている博士。
記憶を失う前のことは、鮮明に覚えているけれど、
それ以降のことは少しも記憶として残っていかない。
これがどれだけ残酷でつらいことか。
博士なりにそれを理解し、忘れてしまっていても体中に貼られたメモを
なんとか生活していくために、活用する姿はなんとも言えない。
そして、その博士を見守る主人公と途中から加わった主人公の息子。
博士の数学への想いと意外なことにタイガースとが3人を結び付けていき、
恋愛とも家族愛とも違う絆ができていきます。
数学ってとても私は苦手なんですが。
学生時代とかその後もかなり苦労させられた科目なのです。
だから本の中の数学の証明とかそういうのは、ほとんど分からなかったけど、
博士がどれだけ数学を愛しているか、数字を尊敬しているかを
そんなふうに見ることができるんだと違う世界を見せられたように
思いました。
28という数字がどうとかなんて、私が思いつくのは年齢くらいだよ。
数学者さんていうのはロマンチストさんが多いんですかね？
それともこれは博士だけなのかな。
しかし、3人の時間が永遠に続くことはなく、1つの区切りがやってきます。
その静かな終わりがね、なんとも言えない。
本当に最初はどうなるかなと思ったけれど、
さすがに本屋大賞に選ばれるだけはあったかなとは思います。
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