名もなき毒

2006年10月22日 小説
ISBN:4344012143
単行本
宮部 みゆき
幻冬舎
¥1,890





宮部さんの新刊。
2年位前に出た「誰か」の続編になります。
あの杉村さんの周辺で新たな事件が。

タイトルにあるように、このお話の鍵となるのは毒。
連続無差別毒殺事件が起こるので、当然そこで使われるのは本物の毒。
だけれども、本当に怖いのは人間の心の中にある毒。

トラブルばかりを起す、アルバイトの女性がいて、
どんどん道を踏み外していく彼女に正当な対応をしていく杉村さんだけど、
それが返って彼女の理不尽な怒りを買い、事態は思わぬ方向へ。

そしてそれと平行して毒殺事件の関係者と知り合ってしまい、
少々おせっかいな性格のおかげて、事件の核心への近づいてしまう杉村さん。

青酸カリが何も知らずに買った飲み物に入っていることは、とても怖い。
私もよく、紙パックやペットボトルの飲料を買うし。
この本を読み進めるうちに、今冷蔵庫にあるのは大丈夫だろうね?
なんて心配をしてしまうくらいに。
でも毒も怖いけれど、本当に怖いのはその毒を毒と分かっていて
何の罪もない人に振りまいてしまう人間。

それは本当の毒でなくても、原田いずみのように理不尽な怒りを
周囲にぶつけ、自分のことを大切にしてくれていた人の幸せでさえ、
壊してしまうという恐ろしいもの。
何の罪もなくても、周りの環境のせいでどこかしらに怒りを
ぶつけたい気持ちを我慢できなかったもの。

どうして自分だけがこんな目に?と思うことは、誰にだってあると思う。
原田いずみのは、どうしようもなくて感情移入は出来ないけど、
犯人の気持ちは、分からないわけではないです。
でも、だからといってこの人のことのやったことは許されるものではない。
こういう心に毒を持った人たちから、抜いてあげるにはどうしたらいいんでしょうね。

他にも住宅問題として、光化学スモッグとか土壌汚染とか
うまく小道具を使ってあるなと思うお話でした。

杉村さんの続編はまた読みたいと思うけれど、あの終わり方だと・・・。
本音では北見氏の気持ちも受け継いで欲しいってのも捨てきれず、です。
これ以上事件に関わると家庭崩壊を起しそうなので、もうない方が
平和でいられるのかなとは思うけど。
悲惨な事件と正反対に、少々気持ちにブレがあっても幸福と言える
環境にいる人だと思うから。

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