ISBN:4022501995
単行本
北村 薫
朝日新聞社
2006/07
¥1,680





千波、牧子、美々は古い付き合いの友人で、アナウンサー、執筆業、
元編集者でカメラマンの妻、という職業の違いはあるけれど、
今でも自宅が近いこともあり、交友が続いている。
未婚、再婚、離婚歴、子どもがいるいない、などの違いはあれど、
それぞれ40代に入り、それぞれの生活を充実させていたとき、
その生活は悲しい変化を迎えることになります。

この小説はミステリーではないし、時の3部作のような不思議な話でもない。
派手さはまったくないけれど、北村薫らしい1冊だったと思います。
文章の端々から聞こえてくる、大筋とは関係のない小さな言葉遊びもですが、
普通、疎遠になりたくなくても結婚や子どもが絡んでくると、
どうしたってなかなか連絡を取ったり会ったりする機会って
減ってくるのが普通の友達関係だと思うけれど、この3人は続いていて。
偶然・ということが大きくても、この3人の関係はとても羨ましい。
あと十数年後に、こんな友達いるのかなぁ、私。

美々の家庭はとてもうまくいっているけれど、小さな秘密をかかえていて、
心無い言葉で危機というものがあるんだけれど、それを他人である
千波や牧子のフォローにより乗り越える親子は、
よりいっそう強い親子になっていきます。

そして死と向かい合わざる得なくなった千波に、美々の起した行動と、
千波との病院でのエレベーターでの別れ。
友達だからこそ、そこで別れることを決意した気持ち。
まだ私には若すぎて本当に理解することは、出来ないかもしれません。
そういう意味では良秋との関係も、よかったなぁと思ったんだけれど、
手放しに喜べないところもありつつ、でも、自分が同じならそばに
こんな人がいるのって、どれだけありがたいだろうと思う。
実際には、こんなふうにはいかないんだろうけど。

ちなみに、牧子とさき親子こそ、「月の砂漠をさばさばと」の
あの親子なのだそうです。
さばの味噌煮とあの歌も、出てきてくれてちょっと嬉しかったですね。

コメント

nophoto
はや
2006年10月5日20:19

全然内容を知らないで読み始めたのですが、
すっかりはまってしまい、半日で読みきってしまいました。
そうですか。月の砂漠とリンクしていたんですね。

人のつながりが希薄な生き方しかしていないので、
こういう話を読むと考えさせられます。

登場人物の全てが基本的に悪意を持っていないというのが
読み手によい印象を与えるのかもしれませんね。

nophoto
はや
2006年10月5日20:20

すみません、挨拶を忘れました。いつも読ませていただいております。はやと申します。

しゃむ
しゃむ
2006年10月6日23:35

コメント、ありがとうございます。
はやさんも北村薫の本がお好きなんでしょうか。
半日で読み終わってしまうとは、すごいですね。
他の作品もですが、北村さんは人とのつながりを書くのが
とても上手だと思います。
そういうところにも惹かれて、新刊が出ると読んでしまいますね。
とりとめもない感想を書いてますが、どうぞよろしくお願いします。

nophoto
はや
2006年10月6日23:57

北村薫さんが覆面作家だったころから読んでます。

事象を人で繋げて世界を作っていこうとされているようですね。

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